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栄養基礎知識

論文が示したサプリの限界。肝障害の5件に1件がサプリ由来で、最も危ないのは健康系だった

論文が示したサプリの限界。肝障害の5件に1件がサプリ由来で、最も危ないのは健康系だった

米国DILIN研究でサプリによる肝障害は10年で約3倍に増加し、全薬物性肝障害の20%がサプリ由来に。グリーンティーエキス・ビタミンA過剰・ボディビル系の危険量と、ビタミンD・オメガ3の安全な使い方を論文ベースで解説する。

diet-app.jp 編集部·2026-09-25·更新日 2026-10-01·9分で読める

米国DILIN研究でサプリによる肝障害は10年で約3倍に増加し、全薬物性肝障害の20%がサプリ由来に。グリーンティーエキス・ビタミンA過剰・ボディビル系の危険量と、ビタミンD・オメガ3の安全な使い方を論文ベースで解説する。

サプリメントで肝障害が起きる確率は、飲む種類と量で大きく変わる。米国の薬物性肝障害研究ネットワーク(DILIN)の追跡調査では、サプリによる肝障害件数が2004〜2013年の10年間で全薬物性肝障害の7%から20%に急増した。健康目的のサプリが、今や処方薬と同等レベルで肝臓を傷める原因になっている。

肝障害を起こすサプリはどれが多いのか

Navarro VJら(Hepatology, 2014)が130例のサプリ起因肝障害を分析した結果、原因の内訳は以下の通りだった。

  • ボディビル系サプリ(筋肉増強・脂肪燃焼):45%
  • ハーブ系・減量・エネルギー系サプリ:30%
  • ビタミン・ミネラルの過剰摂取:15%
  • その他:10%

最も多いのはボディビル系だが、次いで「健康・美容・ダイエット」を謳ったハーブ系サプリが続く。体にいいイメージで購入される製品が、全体の75%を占める原因になっている。

同研究では、サプリ起因の肝障害はアルコール性・ウイルス性の肝障害より入院期間が長く、回復に時間がかかる傾向が示された。

なぜサプリで肝障害が起きるのか

肝臓は体内に入った物質をすべて代謝する「化学工場」の役割を持つ。食品に含まれる微量栄養素は水・食物繊維・他の化合物と一緒に吸収されるため、肝臓への負荷が分散される。

サプリはその物質だけを高濃度で抽出・凝縮している。1錠に含まれるグリーンティーエキスは、緑茶1000杯分のカテキンを圧縮したものに相当する場合がある。肝臓が処理できる「通常の量」を大幅に超えた濃度で届くため、酸化ストレスが発生して肝細胞が傷つく。

特に問題になるのは「長期の継続摂取」だ。1回の摂取では肝臓が処理できても、毎日数ヶ月継続することで蓄積毒性が生じる。自覚症状が出にくく、健康診断で偶然発覚するケースが多い。

「ここまでは安全」の境界線はどこか

研究が示す「肝障害リスクが上昇する量」の目安を整理する。

危険量が明確なサプリ

グリーンティーエキス(カテキン)

EFSA(欧州食品安全機関)は2018年に「エピガロカテキンガレート(EGCG)800mg/日以上で肝障害リスクが上昇する」と結論づけた。市販の緑茶ダイエットサプリには1錠に300〜700mgを含む製品が多く、推奨用量を守っても複数製品の重複摂取で超えてしまうケースがある。食品としての緑茶は安全で、茶葉から抽出したサプリの濃縮製品に限ってリスクが生じる。

ビタミンA

脂溶性で体内に蓄積される。慢性的な過剰摂取(成人で10,000IU/日以上を数ヶ月以上)で肝線維化が起きることが複数の症例報告で確認されている。食品由来のβカロテンは体内での変換量が自動調節されるため安全だが、レチノール型ビタミンA(プレフォームドビタミンA)のサプリは注意が必要だ。

ナイアシン(高用量)

コレステロール改善目的で処方される高用量ナイアシン(1,000mg/日以上)は、肝毒性のリスクがある。通常のビタミンB群補給目的(30〜50mg/日)は問題ない。

ボディビル系サプリ

成分表に記載のないアナボリックステロイドや「テストステロンブースター」を含む製品が市場に流通しており、Navarro研究では入院を要する重篤な肝障害例の多くがこのカテゴリだった。

適正量であれば肝障害リスクがほぼないサプリ

ビタミンD

欠乏が非常に多く(日本人の推計で約60〜80%が不足)、1,000〜4,000IU/日の補給は安全で肝障害の報告も少ない。ビタミンD不足が体重増加と関係する研究も複数あり、正当な補給対象だ。上限は成人で10,000IU/日とされているが、それ以下での肝障害リスクは極めて低い。

オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)

1〜4g/日は中性脂肪低下・抗炎症作用が確認されており、肝臓に対しては保護的に働く可能性が研究で示されている。脂肪肝の改善にも効果があるとする報告もある。オメガ3とダイエットの効果は肝臓の観点でも合理性がある。

マグネシウム

補給剤から350mg/日以内(食品を含めた総摂取量ではなく、サプリ分のみ)であれば安全上限内。マグネシウムはインスリン感受性や睡眠の質に関与し、不足している人が多い。肝障害の報告はほぼない。

ビタミンB12

水溶性で過剰分は尿中に排泄される。植物性食品中心の食生活では不足しやすく、高用量(1,000〜5,000μg/日)でも肝障害は確認されていない。

サプリで「必要な栄養素をすべて補える」が成立しないのはなぜか

食品中の栄養素は単体では働かない。ビタミンCは鉄の吸収を高め、ビタミンDはカルシウムの利用を促進し、ポリフェノールは腸内細菌のエサになる。こうした栄養素同士の相互作用(シナジー)は、サプリで栄養素を個別に摂っても再現できない。

2019年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載されたコホート研究(Keum N, Giovannucci E)では、食品からの栄養素摂取は全死亡リスク低下と関連していたが、サプリからの摂取では同様の関連が見られなかったと報告している。

またビタミン・ミネラルと代謝の関係で解説している通り、吸収率は食品マトリクスの状態に依存する。単体抽出した栄養素は吸収効率が食品と異なり、体内での利用率が変わる場合がある。

サプリが有効な使い方は「不足を補う」ことに限定される。健康診断や血液検査で欠乏が確認された栄養素を、食事で補えない期間に補う用途が最も合理的だ。「食事の代わりに」「全部飲めば安心」という使い方は、研究の現時点での結論では支持されない。

よくある質問

Q: 健診でGOT・GPTが正常値でもサプリで肝臓が傷んでいますか?

A: 正常値でも軽度の炎症が継続している可能性はある。GOT・GPTは細胞が壊れ始めた段階でないと上昇しないため、初期の酸化ストレス段階では正常値が続く。グリーンティーエキスなど肝毒性が報告されているサプリを長期服用している場合は、年1回のGGT検査も合わせて受けることを消化器科では推奨している。

Q: 複数のサプリを組み合わせて飲むのはなぜ危ないのですか?

A: 各製品が「推奨量以内」でも、同じ成分を含む複数製品を重複摂取すると合計量が危険域を超える。グリーンティーエキスは「緑茶サプリ」「脂肪燃焼サプリ」「マルチビタミン」などに重複して含まれることが多い。飲む前に全製品の成分表で同じ成分がないか確認することが重要だ。

Q: プロテインパウダー(ホエイ・ソイ)は肝臓に負担をかけますか?

A: 適正量(体重1kgあたり1.6〜2.2gのたんぱく質を食事と合計した範囲)であれば、健康な肝臓への悪影響は確認されていない。Navarro研究の「ボディビル系」の主因は無申告のアナボリック成分であり、プロテインパウダー自体ではない。ただし腎機能・肝機能に既往がある場合は医師に確認すること。

Q: サプリを飲むなら何を基準に選べばいいですか?

A: 3つの基準が現実的だ。①血液検査で欠乏が確認されたものを補う、②単一成分で用量が明示されている製品を選ぶ(複合サプリは成分の合計量が把握しにくい)、③「緑茶エキス・ハーブブレンド・テストステロンブースター」という表記がある製品は避ける。ビタミンD・マグネシウム・オメガ3が「欠乏しやすく・安全域が広い」基本の3種と考えてよい。

この記事のまとめ

  • 米国DILIN研究でサプリによる肝障害は2004〜2013年に7%→20%と約3倍増加し、ボディビル系・ハーブ系の「健康目的」サプリが主因
  • グリーンティーエキスはEFSAが800mg/日以上でリスク上昇と結論。ビタミンAは慢性的10,000IU/日超で肝線維化リスクがある
  • ビタミンD(1,000〜4,000IU)・オメガ3(1〜4g)・マグネシウム(350mg以内)・ビタミンB12は適正量であれば肝障害リスクが極めて低く、欠乏補給に有効
  • 食品中の栄養素同士のシナジーはサプリで再現できず、「食事の代わり」に使う根拠は現時点の研究では見当たらない
  • サプリは「血液検査で確認された欠乏を補う」用途に限定し、複数製品の重複摂取は避けることがリスク管理の基本

参考資料

  • Navarro VJ et al. "Liver Injury from Herbal and Dietary Supplements" Hepatology (2014)
  • EFSA Panel on Food Additives and Nutrient Sources. "Scientific opinion on the safety of green tea catechins" EFSA Journal (2018)
  • Stickel F et al. "Herbal hepatotoxicity" Journal of Hepatology (2005)
  • Park SY et al. "Association Among Dietary Supplement Use, Nutrient Intake, and Mortality Among U.S. Adults" Annals of Internal Medicine (2019)

※ 本記事の情報は一般的な健康・栄養知識の提供を目的としており、医療アドバイスの代替となるものではありません。 持病や治療中の方は、必ず医師・専門家にご相談ください。 本記事は編集ポリシーに基づき、一次情報と照合のうえ制作しています。

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