非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は症状なく、日本人成人男性の約20〜30%が持つとされる。放置すると脂肪性肝炎(NASH)→肝硬変→肝がんへ進行することがあり、γ-GTP・ALT異常が早期の唯一のサインとなる。
「肝臓は沈黙の臓器」とはどういう意味か
肝臓は痛覚神経が少なく、かなりの損傷が起きても症状が出ません。これが「肝臓は沈黙の臓器」と呼ばれる理由です。
脂肪肝(肝臓に中性脂肪が蓄積した状態)も同様で、初期〜中期段階では自覚症状がほとんどありません。健診でγ-GTP・ALT・ASTが「少し高め」と言われても、体が特に辛くないために放置されるケースが多い。
しかし脂肪肝を放置すると、一部の人で脂肪性肝炎(NASH)→肝硬変→肝がんという経路をたどることがあります。
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)とは何か
NAFLDはお酒をほとんど飲まない人でも起きる脂肪肝です。過剰な糖質(特に果糖)・内臓脂肪の蓄積・インスリン抵抗性が主な原因です。
日本での研究では、成人男性の20〜30%、女性の10%程度がNAFLDを持つとされています(Farrell & Larter, *Hepatology*, 2006)。
NAFLDの中で、炎症が加わった状態がNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)です。NAFLDのうち10〜20%がNASHに進展し、NASHの一部が肝硬変・肝がんへと進行します。
脂肪肝が進行するリスク要因とは何か
以下の要因が重なるほど、単純な脂肪肝からNASHへの進展リスクが高まります:
- BMI 25以上(内臓脂肪の蓄積)
- 2型糖尿病または前糖尿病
- 脂質異常症(特に中性脂肪高値)
- 高血圧
- 果糖・精製糖質の過剰摂取
メタボリックシンドロームの要素が多いほど、NASHへの進展リスクが上昇します。
自分でできる脂肪肝の確認方法
健診での確認:
- γ-GTP・ALT・ASTが正常範囲上限を超えている
- 中性脂肪が150mg/dL以上
- 腹囲が男性85cm・女性90cm以上
これらが重なる場合は、医療機関での腹部超音波検査(エコー)が脂肪肝の診断に最も簡便で有効です。
脂肪肝を改善する方法
最も効果的:体重5〜10%の減少
Promratら(*Hepatology*, 2010)の無作為化試験では、48週間の生活習慣介入で体重を7%以上減らした群で、肝組織学的な改善(脂肪・炎症・線維化すべて)が有意に見られたことが確認されています。
果糖・精製糖質を減らす
特に果汁ジュース・加糖飲料・菓子類を排除することで、肝臓での脂質新生が抑えられ脂肪肝が改善します。
運動(有酸素+筋トレ)
週150分の中強度有酸素運動が内臓脂肪と肝臓脂肪を同時に減少させます。
よくある質問
Q. γ-GTPが少し高い程度でも脂肪肝の心配がありますか?
A. γ-GTPが正常値を超えている(男性50IU/L以上、女性30IU/L以上)場合は脂肪肝・過度なアルコール・薬剤性肝障害などが疑われます。ALT・AST・腹部超音波検査を合わせて確認することが重要です。
Q. 脂肪肝から肝がんに進行する確率はどれくらいですか?
A. NAFLDのうち10〜20%がNASH(脂肪性肝炎)に進展し、NASHの中で肝硬変に至るのは5〜15%、さらに肝がんに進行するのは肝硬変患者の1〜4%/年とされています。リスク要因が重なるほど進展しやすくなります。
Q. 脂肪肝を改善するためには何から始めればいいですか?
A. 最も効果が大きいのは果汁ジュース・加糖飲料をやめることです。次に体重を5〜7%減らすことを目標に、週150分の有酸素運動と精製糖質の削減を組み合わせます。
この記事のまとめ
- 脂肪肝は症状がなく、日本人成人男性の約20〜30%が持つとされる「沈黙の病気」
- 放置するとNAFLD→NASH(脂肪性肝炎)→肝硬変→肝がんへと進行することがあり、早期対処が重要
- 体重の5〜7%減少・果糖・精製糖質の削減・週150分の有酸素運動が最も効果的な脂肪肝の改善法
参考文献
- Farrell, G. C., & Larter, C. Z. (2006). Nonalcoholic fatty liver disease. *Hepatology*, 43(S1), S99–S112.
- Promrat, K. et al. (2010). Randomized controlled trial testing the effects of weight loss on nonalcoholic steatohepatitis. *Hepatology*, 51(1), 121–129.
- 日本消化器病学会(2020). NAFLD/NASH診療ガイドライン2020.