早食いは満腹感が届くまでの20分の間に食べ過ぎを引き起こし、BMIを高める要因になる。日本人3,000人の研究で早食いとBMIに有意な相関が確認され、ゆっくり食べるだけで摂取カロリーが減少する仕組み。
早食いが太りやすい習慣であることは、複数の疫学研究で支持されている。満腹ホルモンの遅延と、咀嚼による消化・代謝への影響がその主なメカニズムだ。
なぜ早食いは太るのか
①満腹シグナルの遅延
食事を始めてから満腹感が生じるまでには、約20分かかると言われている。この時間は、食べたものが消化管に到達し、GLP-1・PYY・レプチンなどの満腹ホルモンが分泌されるまでのタイムラグだ。
早食いをすると、このシグナルが届く前に大量に食べてしまう。結果として、必要以上のカロリーを摂取してから「お腹いっぱい」と感じる、ということが起こる。
②食事誘発性熱産生(DIT)への影響
よく噛むことは食事誘発性熱産生を高める効果がある。早稲田大学の研究(2014年、Obesity誌掲載)では、同じ食事でも咀嚼回数が多いグループは、DIT(食後のエネルギー消費)が有意に高いことが示された。
③血糖値の急上昇
よく噛まずに食べると消化が速く進み、グルコースが急速に血液中に吸収されて血糖値が急上昇しやすい。血糖値スパイクはインスリンの大量分泌を引き起こし、脂肪の蓄積を促進する。
血糖値スパイクとGI値では、血糖値の上がり方と脂肪蓄積の関係を詳しく解説している。
研究が示す早食いのリスクとは何か
2011年に日本の厚生労働省の研究班が発表したデータでは、早食いの人はそうでない人より肥満のリスクが約1.97倍高いことが示された。このデータは成人男女数千人を対象にしたものだ。
また2017年にBMJ Open誌に掲載された日本の研究では、食事速度と肥満・メタボリックシンドロームの関係を約6年間追跡調査した結果、普通食いの人と比べて早食いの人はメタボリックシンドロームの発症リスクが2.14倍であることが示された。
これらのデータは早食いと肥満の相関を示しているが、早食い自体が原因というより「食べすぎやすい習慣」が体重増加につながっていると解釈するのが適切だ。
よく噛むことの効果は本当にあるか
①自然な食事量の減少
よく噛むことで食事のスピードが落ち、満腹シグナルが間に合いやすくなる。2011年にAmerican Journal of Clinical Nutritionに掲載された研究では、同じ食事を40回噛んだグループは、15回噛んだグループより、その後24時間のカロリー摂取が有意に少なかった。
②食事誘発性熱産生の向上
前述の早稲田大学の研究では、咀嚼回数を増やすだけで食後のエネルギー消費が高まることが確認されている。これは唾液分泌の増加・消化管の活性化・交感神経への刺激が関係していると考えられている。
③食事の満足感の向上
よく噛むことで食べている時間が延び、食事の満足感(心理的な満足)が高まる。食後の過食・間食を抑える効果が期待できる。
ライフスタイル習慣とダイエットでは、食べ方の習慣が体重管理に与える影響をまとめている。
早食いを改善するための実践的な取り組み方はどうすればよいか
よく噛む習慣を作るための具体的な方法を紹介する。
- 一口ごとに箸・フォークを置く:口に入れたら置く習慣をつけると、自然と咀嚼回数が増える
- 30回噛むことを意識する:最初は多すぎると感じるが、徐々に感覚が変わる
- 柔らかいものより食感のある食材を選ぶ:野菜・全粒穀物など噛みごたえのある食材は自然と咀嚼回数が増える
- スマホ・テレビを見ながら食べない:「ながら食い」は無意識のうちに食べる速度を上げる
FAQ
Q. 1口30回噛むというのは現実的ですか?
A. 最初は意識しないと難しいですが、食材の種類によって適切な咀嚼回数は異なります。柔らかい食材なら10〜15回、硬い食材なら20〜30回程度が目安です。「急かさない」意識が大切です。
Q. よく噛むだけで体重が落ちますか?
A. 単独で大幅な体重減少を期待するのは難しいですが、自然と食事量が減り、血糖値の上昇が緩やかになる効果があります。食事制限と組み合わせると効果が高まります。
Q. 液体(スムージー・スープ)は噛めないのに太りますか?
A. 液体は咀嚼によるDIT向上や満腹シグナルの遅延を防ぐ効果が得られにくいため、食事全体を液体に置き換えると食後の満足感が低く、その後の過食につながりやすいとされています。
この記事のまとめ
- 早食いが太りやすい主な理由は「満腹シグナルの遅延による食べすぎ」「血糖値の急上昇」「DITの低下」
- 日本の研究で早食いの人は肥満リスクが約2倍高く、メタボリックシンドロームリスクも2.14倍という結果がある
- よく噛むことで食後のエネルギー消費(DIT)が高まることが研究で示されている
- 40回噛むグループは15回噛むグループより翌日のカロリー摂取が少なかった研究がある
- 一口ごとに箸を置く・スマホを見ながら食べないなど、食べるスピードを落とす習慣が有効