糖質は単糖類・二糖類・多糖類の3種類に分類され、消化・吸収の速さと体脂肪への変換経路がまったく異なる。精製された多糖類(白米)はGIが砂糖より高くなることがあり、単糖類の果糖は血糖値を上げずに内臓脂肪を増やす。論文に基づき、含まれる食材・商品と体への影響を整理する。
糖質は単糖類・二糖類・多糖類の3種類に分類され、消化に必要なステップ数が異なるため、血糖値への影響速度と脂肪への変換経路が大きく変わる。Jenkins DJ ら(Lancet, 1981)が発表した血糖指数(GI)の研究では、精製された多糖類である白米のGIが72〜84と、砂糖(二糖類)のGI65を上回ることが示された。「多糖類は体によい」「砂糖は太る」という単純な図式は正確ではなく、種類と加工の程度で脂肪のできやすさが決まる。
単糖類・二糖類・多糖類とはそれぞれ何か
糖質(炭水化物)は、糖の最小単位(単糖)がいくつ連なっているかで3種類に分類される。
単糖類(monosaccharides):それ以上分解できない最小単位の糖。ブドウ糖(グルコース)・果糖(フルクトース)・ガラクトースが代表例。消化酵素が不要で、腸粘膜から直接血流に吸収される。
二糖類(disaccharides):単糖2つが結合した糖。砂糖(スクロース=グルコース+フルクトース)・乳糖(ラクトース=グルコース+ガラクトース)・麦芽糖(マルトース=グルコース+グルコース)が代表例。腸の酵素で1ステップ分解されてから吸収される。
多糖類(polysaccharides):単糖が数十〜数千個連なった糖。でんぷん(アミロース・アミロペクチン)・食物繊維・グリコーゲンが代表例。複数の消化酵素による段階的な分解が必要で、構造によって消化速度が大きく異なる。
Nuttall FQ(Nutrition Today, 2015)の分類論文では、消化可能な糖質を「速消化性(rapidly digestible)」と「遅消化性(slowly digestible)」に整理し、多糖類の構造(直鎖か分岐か)が消化速度を決定することを示した。
なぜ白米は砂糖より血糖値を上げやすいのか
多糖類は消化に手間がかかるためゆっくり吸収されると思われがちだが、精製された多糖類は例外だ。
白米のでんぷんは「アミロペクチン」(樹状の分岐構造)の割合が約80%と高く、消化酵素が多数の末端に同時に作用できるため分解が速い。Jenkins DJ ら(Lancet, 1981)が測定した52食品のGIデータでは、白米のGIは72〜84、砂糖(スクロース)のGIは65と報告されており、白米が上回る結果になった。
一方、砂糖を構成する果糖(フルクトース)は単糖類でありながらGIが25と非常に低い。果糖は血液中のグルコース濃度(血糖値)を直接上げないためだ。しかし果糖はその代わりに肝臓に直行し、中性脂肪に変換されやすい(果糖の種類と内臓脂肪の関係)。血糖値を上げにくい=健康的、という単純な図式が成立しないのは、果糖がその典型例だ。
単糖類・二糖類・多糖類が多い食材と商品はどう違うのか
単糖類が多い食材・商品
- ブドウ糖(グルコース):はちみつ・ブドウ・コーン・スポーツドリンク(ブドウ糖果糖液糖)
- 果糖(フルクトース):清涼飲料・フルーツジュース(100%でも同様)・はちみつ。コンビニの果汁100%ジュース200mLに果糖が約10〜15g含まれる
二糖類が多い食材・商品
- 砂糖(スクロース):料理用砂糖・チョコレート・菓子類・缶コーヒー加糖。砂糖50gはフルクトース25g+グルコース25gに相当
- 乳糖(ラクトース):牛乳・ヨーグルト・チーズ。牛乳200mLに約9〜10gのラクトースが含まれる
- 麦芽糖(マルトース):水あめ・麦芽糖飴・ビールの一部
多糖類が多い食材・商品
- 高GIの精製でんぷん:白米・白パン・うどん・コーンフレーク・もち・じゃがいも(温かい状態)
- 低〜中GIの未精製でんぷん:玄米・全粒粉パン・オートミール・豆類・芋類(冷却後)
- 消化されない多糖類(食物繊維):野菜・海藻・きのこ・ごぼう。食物繊維は消化酵素で分解されないためカロリーをほぼ生まない
Slavin JL(Journal of the American Dietetic Association, 2005)のレビューは、食物繊維豊富な未精製の多糖類が腸内環境を改善し、血糖値の急上昇を抑制することを整理した。同じ多糖類でも「精製されているか否か」が体への影響を決定的に変える。
でんぷんの構造の違いはどう体に影響するのか
でんぷんには「アミロース」と「アミロペクチン」の2種類がある。
- アミロース:直鎖状の構造で消化酵素が作用しにくい。消化が遅くGIが低い
- アミロペクチン:分岐構造で末端が多く、酵素が同時に多数の箇所を分解できる。消化が速くGIが高い
白米はアミロペクチン約80%・アミロース約20%。もち米はアミロペクチン約100%のためGIが極めて高い。豆類はアミロース比率が40〜50%と高いため消化が遅く、GIが30〜50程度に収まる。
さらに「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」という現象も重要だ。白米や茹でたじゃがいもを冷やすと、でんぷんの一部が再結晶化して消化酵素が作用しにくくなる。Blaak EE ら(Obesity Reviews, 2012)のレビューでは、冷えた状態の白米やポテトサラダのGIは温かい状態より低下することが示された。おにぎりやポテトサラダが温かい白米より血糖値を上げにくいのは、このレジスタントスターチの影響が一因だ。
血糖スパイクと体脂肪の蓄積はどう連動するのか
Ludwig DS ら(JAMA, 2002)の総説では、高GI食品を継続的に摂取すると「血糖値急上昇→インスリン急分泌→血糖値急低下」というサイクルが繰り返され、脂肪蓄積を促進することが示された。
インスリンが大量分泌されると、余剰なグルコースを脂肪細胞に取り込む指令が出る。血糖値が急低下すると偽の空腹感が引き起こされ、食べ過ぎにつながりやすい。未精製の多糖類(玄米・豆類・オートミール)を中心にすると血糖スパイクが抑えられ、インスリン分泌が穏やかになり、体脂肪として蓄積される量が減る。血糖値スパイクを防ぐ食べ方では、食材の組み合わせによる具体的な管理法を解説している。
日常で意識すべき糖質の選び方は何か
研究結果を実践に落とし込む優先順位は以下の通りだ。
- 単糖類(果糖)が多い清涼飲料・フルーツジュースを減らす:血糖値は上げにくいが肝臓で中性脂肪に変換されやすい
- 精製された多糖類(白米・白パン・もち)の量を把握する:GIが高く血糖スパイクを招きやすい
- 未精製の多糖類(玄米・全粒粉・豆類・オートミール)に置き換える:アミロース比率が高く消化が遅いため腹持ちが良い
- 野菜・海藻・きのこ(食物繊維)を食前に食べる:食物繊維が糖の吸収を緩やかにする
砂糖を「完全に悪」とするのではなく、種類と総量で管理することが現実的だ。砂糖(二糖類)は果糖と比べて吸収に1ステップかかり、固体で量をコントロールしやすい。清涼飲料の遊離果糖の方が、同量のカロリーなら内臓脂肪への影響が大きい。
Q: 白米と砂糖、どちらが太りやすいですか?
A: 血糖値への影響では、GIの高い白米(72〜84)が砂糖(65)を上回ることがある(Jenkins ら, 1981)。しかし砂糖に含まれる果糖は血糖値を上げずに肝臓で直接中性脂肪に変換される(Tappy & Lê, 2010)。「血糖スパイクを起こしやすい白米」と「肝臓に脂肪を蓄積しやすい砂糖(果糖成分)」で太り方の経路が異なる。食物繊維と一緒に食べれば白米の吸収も遅くなるため、単体での比較より食べ方と組み合わせで判断することが重要。
Q: 乳糖不耐症とは二糖類の消化ができない状態ということですか?
A: 正確にはその通り。乳糖(ラクトース)は腸粘膜のラクターゼという酵素でグルコースとガラクトースに分解される。乳糖不耐症はラクターゼが少ない状態で、分解されない乳糖が大腸に到達して腸内細菌に発酵され、ガス・下痢・腹痛を起こす。Sahi T(Scandinavian Journal of Gastroenterology, 1994)によると、ラクターゼ活性の低下は日本人・アジア人に多く見られる遺伝的特性で、成人後に牛乳でお腹の調子が悪くなる人はこの可能性がある。
Q: オートミールは白米より腹持ちが良いのはなぜですか?
A: オートミールのでんぷんはアミロース比率が高く消化が遅い(GI:55)。さらにβグルカンという水溶性食物繊維が胃の内容物をゲル状にして消化速度を遅らせる。Slavin JL(2005)のレビューでは、β-グルカンが食後の血糖上昇を抑制し、満腹感を延長することが報告された。白米(GI:72〜84)と比べると血糖スパイクが小さく、インスリン分泌も穏やかになるため食後の偽の空腹感が起きにくい。
この記事のまとめ
- 糖質は単糖類・二糖類・多糖類に分かれ、消化ステップが増えるほど吸収は遅くなる—ただし精製された多糖類(白米)のGIは砂糖を上回ることがある(Jenkins ら, 1981)
- 単糖類の果糖(清涼飲料・フルーツジュース)は血糖値をほとんど上げないが、肝臓で直接中性脂肪に変換されるため内臓脂肪の蓄積経路が砂糖と異なる
- 同じでんぷん(多糖類)でも、アミロペクチンが多い白米・もちは高GI、アミロースが多い豆類・玄米は低GI—冷やすとレジスタントスターチが増えてGIが下がる
- 高GI食品の継続摂取は血糖スパイク→インスリン急分泌→偽の空腹感というサイクルを繰り返し、体脂肪蓄積を促進する(Ludwig ら, 2002)
- 体脂肪への影響は「血糖スパイク経路(精製多糖類)」と「肝臓脂肪合成経路(果糖)」の2つがあり、糖質の種類によって太り方の仕組みが異なる